何となく『信用取引=危険』というイメージを持っています。
周りの人からもそんな話を聞くのですが、本当にそうなんでしょうか?
株取引には、現物取引と信用取引の2種類がありますが、ネットやSNSなどで「信用取引は危険だ」という批判的な内容をよく目にします…。
その理由は、大きく値下がりしたときに自己資金以上の損失が発生してしまう可能性があるためです。
しかし信用取引は、リスクを把握して堅実な運用を意識すれば、リターンや投資機会を格段に増やせる可能性のある投資手法でもあります。
今回は、そんな信用取引のリスクやメリットについて徹底的に解説していきます!
信用取引とは?
信用取引の基本的な情報を3つの項目に分けて学んでいきましょう。
- 信用取引の概要
- 「一般信用」と「制度信用」
- 「信用買い」と「信用売り」
- 信用取引にかかるコスト
信用取引の概要
信用取引とは、一定額の現金または保有株を証券会社に担保として預けることで、自己資金額の約3.3倍の取引ができる制度のことです。
つまり「お金を借りて、自己資金以上の取引をする」ということ!
信用取引であれば、「買い」と「売り」どちらからでも取引を始められるので、上昇局面だけでなく下落局面でも取引機会を作ることができます。
また投資初心者を悩ませる問題の1つとして「資金力の問題」が挙げられます。
元々まとまった資金を持っている人であれば、現物取引で問題ありませんが、実際のところ資金不足に悩む投資初心者も少なくないはず…。
そういった資金力の悩みを解決してくれるところも信用取引の強みと言えます。
「一般信用」と「制度信用」
信用取引には「制度信用」と「一般信用」の2種類があります。
同じ信用取引と言っても、それぞれ適切な使い方と特徴があるので確認していきましょう!
一般信用
決済期限や金利などのコストを証券会社と顧客(投資家)間で自由に決定できる取引のことです。
投資対象として、買建はほぼ全銘柄が可能ですが、売建は各証券会社の選定銘柄に準ずることになります。
返済期限は年単位や無期限など長期間保有することが可能ですが、制度信用に比べて金利を高く設定している証券会社が多いため、保有しすぎると金利がかさんでしまうので注意が必要です。
制度信用
返済期限や品貸料が一律に決められている取引のことです。
国内上場銘柄のうち、一定基準を満たした制度信用銘柄(買建のみ可能な銘柄)と貸借銘柄(買建と売建が可能な銘柄)が対象銘柄となります。
一般信用に比べて金利が安く設定されていることが多いが、返済期限が6ヶ月と決まっているため、含み損が大きく膨らんだ状態でも必ず決済しなければならないところには注意が必要です。
例えば、一般信用を使うなら「制度信用銘柄ではない株を6ヶ月以上保有する」というように上手に使い分けをしましょう!
「信用買い」と「信用売り」
信用取引では「買い」「売り」のどちらからでも、取引を始めることが可能です。
実際の取引の際に混乱しないように、しっかりと確認しておきましょう。
信用買い
信用買い(買建)は、証券会社から資金を借りて、株の購入からスタートする取引のことです。
現物取引と同じく「株を買う⇒売る」という流れなので、現物取引をしたことのある人であれば、問題なく取引できるでしょう。
当然ながら「株を安く買って、高く売る」ことで利益を出すことができます。
信用売り
信用売り(売建)は、証券会社から株を借りて、株の売却からスタートする取引のことです。
つまり信用売りでは「株を売る⇒買う」という流れになり、これを買い戻すとも言います。
現物取引・信用買いとは流れが逆になるので、「株を高く売って、安く買う」ことで利益を出すことができます。
信用取引にかかるコスト
信用取引にかかる5つのコストについて解説していきます。
コストのことを知らずに取引していると、思わぬ損失を招くことになるので理解を深めていきましょう!
- 信用取引金利(信用買いで発生)
- 名義書換料(信用買いで発生)
- 貸株料(信用売りで発生)
- 品貸料(信用売りで発生)
- 信用管理費
信用取引金利(信用買いで発生)
証券会社から借りた資金に対して発生する金利のことで、「買方金利」「日歩(ひぶ)」とも言います。
証券会社からお金を借りて、株の購入日から返済までの期間の利息を支払うことになります。
名義書換料(信用買いで発生)
権利付き最終売買日と権利落ち日をまたいで保有した場合に発生する権利処理手数料のことです。
例えば、決算期末などを越えた場合に徴収されます。
貸株料(信用売りで発生)
証券会社から借りた株に対して発生する、いわゆる「レンタル料」のことです。
品貸料(信用売りで発生)
証券会社に資金や株式を貸してくれる証券金融会社の株が不足した際に、外部(機関投資家など)から株を借りるときの調達にかかるコストのことで、逆日歩(ぎゃくひぶ)とも呼ばれています。
品貸料は、その銘柄の株不足が解消されない限り、休日に関わらず毎日発生し続けます。
つまり、信用売りをしている人にとっては、1日でも早く株価が値下がりをして利益を確定させないとコスト負担ばかりの日々が続くことになります。
品貸料があることで「買い戻しニーズが高まり、株価の安定に繋がる」と考えられており、市場バランスを担う一面も持っています。
信用管理費
信用取引に関するいわゆる「事務手数料」のことで、買い・売りどちらから取引を始めても同様に発生するコストです。
信用取引のメリットとは?
ここからは、信用取引ならではの2つのメリットについて解説していきます。
- 低資金でも大きなリターンを目指せる
- 下落相場でも利益を得るチャンスがある
このメリットをうまく利用することで資産を大きく増やせる可能性があるということですね!
低資金でも大きなリターンを目指せる
前項でも解説している通り、信用取引では一定額の現金・または保有株を証券会社に担保として預けることで、自己資金の約3.3倍もの取引が可能になります。
つまり手持ち資金が少ない状態でも、取得株数を増やせたり、値がさ株(株価の高い銘柄)も扱えるようになるので、幅広く投資を行うことが可能になります。
以下の条件をもとに、取得株数を増やせることがどれだけ強みになるのか確認してみましょう。
- 自己資金は100万円
- 1単元(100株)30万円の銘柄を購入
- 株価3000円 → 4000円に上昇(値幅1000円)
- 信用取引は「自己資金100万円×3.3倍=330万円の運用」とする。
- 現物取引:100万円÷1単元30万円=300株購入 → 値幅1000円×300株= 利益30万円
- 信用取引:330万円÷1単元30万円=1100株購入 → 値幅1000円×1100株= 利益110万円
このように同じ株を買うにしても、保有株数が違うだけで利益に大きな差が生まれます。
上記の利益を次回の取引資金にする場合、現物取引では130万円ですが、信用取引は約720万円の取引をすることができるようになります。
信用取引の方は、一気に低資金から抜け出しましたね…!
信用取引であれば、資金不足の解消が可能になるので、効率よくハイリターンを狙えると言えるでしょう!
下落相場でも利益を得るチャンスがある
一般的にイメージされる投資といえば、「安く買って高く売る」だと思います。
これまで下落相場の間は「見てるだけ」「投資しない」という選択肢しかなかった方も多いのではないでしょうか。
しかし信用取引であれば、売建(売却から開始する取引)をすることができるので、利益を得るチャンスは単純に現物取引の2倍になります。
つまり「上昇相場には買建、下落相場には売建」と使い分けることで、どちらの局面でも利益を得られるということです。
売建を覚えれば、益々資産形成のスピードを上げられそうです!
ただ売建の際は、品貸料には十分注意しておくこと!
信用取引のリスクとは?
信用取引をする上で、「この2つは知っておかないと危険!」という内容を解説していきます!
- 自己資金以上の損失をする可能性
- 追証が発生する可能性
資産を増やすための投資ですが、同時に資産を守るための投資であることを忘れてはいけません。
思わぬ大きな損失をしないように、しっかりと確認していきましょう。
自己資金以上の損失をする可能性
信用取引は、少ない資金からでも大きなリターンを狙えるところがメリットではあるものの、自己資金以上の大きな金額を動かすことになるので、上手くいかなかったときは損失額が想定以上に大きくなる可能性があります。
以下2つを条件に現物取引・信用取引でそれぞれどのような結果になるかを確認してみましょう。
- 自己資金は100万円
- 保有株が50%下落(購入時から半値)
- 信用取引は「自己資金100万円×3.3倍=330万円の運用」とする。
- 現物取引:100万円×1/2=50万円 ⇒ 損失50万円となり、残金50万円・負債0円
- 信用取引:330万円×1/2=165万円 ⇒ 損失165万円となり、残金0円・負債-65万円
信用取引では自己資金の最大約3.3倍もの金額を扱えるようになる反面、上記の例のようにレバレッジをかけすぎると自己資金を失うだけに留まらず、最悪負債まで抱え込んでしまう状況になってしまいます。
信用取引を行う際は、まずレバレッジに慣れることを目標に、低レバレッジから感覚をつかんでいくようにしましょう!
急に怖くなってきました…
もし「怖い」と感じるのであれば、自分のリスク許容度を超えている可能性が高いから、その時は一旦取引をやめて見直すことを優先しよう!
追証が発生する可能性
信用取引では、保証金(現金または保有株)を担保にすることで、証券会社からお金を借りて取引ができるようになります。
そのため証券会社は、保証金を管理するために「最低委託保証金維持率」を設定しており、常に一定値よりも高い保証金維持率をキープする必要があります。
この設定値は証券会社によって異なりますが、20%や25%が一般的と言えます。
この設定値を下回ってしまうと、追加で保証金を入金しなければならなくなり、この状態のことを「追証」と言います。
【例】以下4つの条件の場合、追証になるのか確認してみましょう。
- 最低保証金維持率25%の証券会社を利用
- 保証金は100万円(信用取引で資金300万円)
- X社の株を300万円分購入
- 購入後、X社の含み損が30万円発生
以下の式で保証金維持率を算出できるので、式に当てはめてみましょう。
- 委託保証金=100万円 建玉評価損=30万円 建玉総額=300万円 最低保証金維持率=25%
(100万円-30万円)÷300万円×100=23.3%⦅追証発生!⦆
もし追証が発生した場合は、保証金維持率を回復させるために、証券口座への追加入金が必要となります。
追加入金は、追証発生当日から翌営業日(または翌々営業日)までに行わなければならないため、殆ど猶予がありません。
期日内に入金できなければ、含み損を抱えた状態で強制決済されるので要注意です!
追証を防ぐには、保証金の現金比率を増やしたり、過度なレバレッジを控えるようにしましょう!
まとめ
ここまで信用取引の基礎知識からリスク・メリットまで幅広く解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
もう一度、おさらいのために本記事の重要ポイント3つを確認しておきましょう。
- 信用取引は、現金・株を担保にすることで自己資金の最大3.3倍のレバレッジ取引ができる
- 下落相場でも利益を得られるチャンスを作れる
- 自己資金以上の損失や追証発生には要注意!
信用取引をしていると、自身の資金が増えたような感覚に陥ることもあるが、実際は「借りているお金」ということを強く意識しましょう。
本記事を通して、信用取引は資金を大きく増やせる可能性がある投資方法ということを理解していただけたと思います。
ただ、効果的に利用するためには、自分のリスク許容範囲内での運用に努めることが最も重要です。
リスクとメリットを知って「信用取引=危険」という安易なイメージがなくなりました!
本日はここまでです!ありがとうございました!
コメント